トンネリング法によってインレーを避けたケース

15近心のコンタクト下部に象牙質1/3を超えるカリエスを認め、切削介入を行いました。
通常隣接面のカリエスにはインレーなどの間接法による修復処置が適応となります。
しかし、インレーには「健全歯質を多く削ってしまう」致命的な欠点があります。

今回、コンタクトエリアは健全歯質を保っていた点と、辺縁隆線の保存が可能であったため、

頬側―口蓋側からアプローチするトンネリング法を適応しました。


トンネリング法は軟化象牙質を取り残しやすく、器具操作が非常に煩雑なので、十分な研鑽が必要です。
トンネリング法の利点として
・健全歯質を可及的に保存することが可能
・処置回数の短縮
・間接法ではないため、印象からの技工操作が不要
・金銭的な患者負担の減少
などが期待できます。

 


軟化象牙質除去後の写真です。う窩は歯肉縁下まで進行しており、完全なラバーダム防湿を行うことはできませんでした。そこで写真のように複数歯にわたってラバーダムを設定し、可能な限り防湿を試みました。
ロールワッテでの簡易的な防湿に比較すると
・呼気の遮蔽
・薬剤の広範囲な飛散
・器具の誤飲・誤嚥の防止
・舌の排除
などが期待できます。ちなみにラバーダムの多数歯露出は器具操作が段違いに楽です。
装着時に多少の煩雑さが伴いますが、なれれば1分くらいで装着できます。

1枚8円程度のラバーダムシートと1分弱のコストで、非常に有意義なメリットがあると考えております。

 

トンネリングは軟化象牙質を取り残しやすいため、慎重なエキスカベーションとう蝕検知液による頻回の確認が大切です。

頬―舌・口蓋方向からのアクセスの他にも、辺縁隆線とコンタクトエリアを残し、咬合面からアプローチすることも可能です。

どちらにしろ、テクニカルセンシティブです。さまざまな形状のスプーンエキスカを準備しておくことをお勧めします。
軟化象牙質にアクセスできないようなら、潔く間接修復に切り替えております。


う窩が深く、光硬化型CRでは未重合CRが残る危険性が考えられたため、グラスアイオノマーセメントとCRによるサンドイッチテクニックにて充填を行いました。
トンネリング法はう窩へのアクセスだけでなく、充填時にも制約があります。

光依存性の強い充填材料を使用すると、照射光が十分に届かずレジンを十分に反応させることができない可能性があります。

未重合モノマーによる歯髄刺激や重合不良が危惧される場合は、化学重合材料の応用が有効です。

デュアルキュアタイプのCRを適用可能ですが、今回のケースではCファクターが高く、

重合収縮による弊害が懸念されます。
以上より煩雑ではあるのですが、グラスアイオノマーセメントを深部に適用し、表層部にCRを用いて審美性を確保しました。


4か月後の経過写真です。問題なく十分に機能しております。
トンネリング法はその手技の煩雑さから敬遠されがちですが、
1回で治療が終わり、型取りせず、加えて費用を安価に抑えることができます。
何より健康な歯を残すことができるという大きなメリットがあります。
患者さん目線で立つと、その有効性は大きいと思います。
隣接面う蝕=インレーではなく、充填修復という選択肢があることで患者さんの選択肢が広がり、

多くの人のニーズにこたえることができると考えられます。