ゴールドインレーを用いた修復処置

現存する治療方法の中でも昔から行われ、治療方法が確立しているのがゴールドによる修復です。
予知性に優れ、口腔内との相性もいいと考えております。

古くは金箔充填に始まり、鋳造法の確率により多様な用途に用いられるようになりました。

新しい材料が日進月歩のごとく登場するなかでも、その有効性は現在でも色あせてはいません。


だいぶ前に仮詰めした歯を治してほしい、との主訴のもとゴールドInによる修復を選択しました。

このように大臼歯部において咬頭の一部を含むケースや、辺縁隆線の大きな欠損への

CR充填での予後は確立されておらず、インレーのような間接修復が第一選択であると考えています。


  ラバーダム防湿下にて充填物を除去後、軟化象牙質の可及的な除去を行い、CRにて裏層を行いました。
メタル修復の形成で気を付けている点が、点角・線角を明確にすることと、

窩縁形態でベベルを付与するようにしています。


現在に続く鋳造法が確立したのは1900年代前半にTaggartらによって開発されたロストワックス法が発端となり、

Harris,Ortonらによるキャストクラウンの開発、

そして1960年代にクリストバライト系埋没材の開発によるフルキャストクラウンの登場で、

現在の鋳造法に近い方法が行われるようになりました。

 

その鋳造法の致命的な欠点が鋳造そのものです。

金属を溶かして鋳型に流し込むため、どうしても鋳造収縮が生じてしまいます。

金合金でだいたい1.5%前後収縮するため、その分適合が甘くなります。(鋳造収縮は理論上、埋没材の硬化膨張・加熱膨張などで補償可能)

そのため窩縁形態にベベルを付与しない、いわゆるバットジョイントにしてしまうと

鋳造収縮分だけセメントラインが露出します。
過去に合着用セメントとして使用していたカルボキシレートセメントや、リン酸亜鉛セメントは

セメント自体の強度が低く、セメントラインの露出は2次カリエスを惹起しうる要因でした。
現在ではセメント自体の強度が著しく向上しているため、セメントラインの露出は許容できます。(でないとセラミックインレーは成り立ちません)


ですが歯質と修復物の間に一切間隙がないのが理想と言えます。

完全にとはいきませんが、それに近づけることができるのがゴールドによる修復の特徴です。

それが「マジックマージン・テクニック」という辺縁すり合せ法です。


マジックマージン・テクニックは金合金の展延性を活かし、インレーのマージンラインを引き延ばすことで、

ギャップをできる限り少なくする方法です。

間接修復では印象→石膏模型→ワックスアップ→キャストと多くのステップが介在するため、

どうしても微妙な誤差が生じてしまいます。

特にマージンラインでの誤差が大きいとプラークの停滞を惹起し、2次カリエスの原因となりえます。


そのマージンラインでのギャップを、アマルガム充填の際に使用する特殊な回転器具でバニッシュしていきます。
金合金が微細な凹凸にピタッと入っていき、まるで歯と一体化していくように見えます。
探針や綿球などで引っ掛かりが無いか地道に確認しながら、徐々に鞣していきます。
そのため時間がかかります。また、それなりに力をかけないと伸びないので、けっこう手が痛くなります。
トルクが強く、質実剛健なハンドピースの使用をお勧めします。


マジックマージン・テクニック後の写真です。

ツルツルです。この安心感がいいです。


約半年後の経過写真です。当然ですが、全く問題ありません。
近年ゴールドによる修復は、その有効性が再確認されつつあるようです。
ゴールドによる修復以上に予知性のある修復処置はないのでは・・と考えてしまうほどその予後に優れています。
しかし、ゴールドによる修復は風化が進んでおり、マジックマージン用のバニッシャーは入手困難です。

私の知る限り大々的にセミナーや講演会は行われていません。
そしてダイレクトゴールドにいたっては、今のうちに年配の先生に伝授してもらわないと絶滅してしまうでしょう。

技術的に難しく、インプラントのように商業的ではないため嫌煙されているのではないでしょうか。


20年・30年経過した金箔充填を見ると、本当に素晴らしい治療だと感心させられます。
だからこそゴールド修復のような古来より鍛え上げられた治療方法を残していく必要性を感じます。
いくら最新でも最良とは限りません。当医院の一番古いユニットは30年物ですが、現役バリバリです。
まさに温古知新ではないでしょうか。

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こちらのページは東松山グリーン歯科の渡部誠弘が個人運営する勉強会での向上と研鑽を目的とした歯科医師向けコンテンツです。
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