グラスアイオノマーによる歯頸部の修復

グラスアイオノマーセメントはその臨床操作の煩雑性と保険点数が低いことより、多くの臨床家から敬遠されている修復材料ではないでしょうか。
グラスアイオノマーは使い方次第で、とても優秀な修復材料として機能します。
今回は高強度型グラスアイオノマーである「エクイアForte」を用いて、比較的高齢の方の歯頸部~根面にかけての修復処置を紹介します。

 


CR充填が施されていますが、残念ながら二次齲蝕に罹患しております。本人の自覚症状はありませんでした。


33の不良充塡物の除去後、スプーンエキスカベータにて軟化象牙質を慎重に取り除きました。
歯頸部の修復である点と叢生の為、ラバーダムを使用することができませんでした。


33修復直後の写真です。
エクイアForteでは充填後、形態修正を行ったのちにレジンコーティングを施します。
このコーティング処置によってグラスアイオノマーの欠点である縁端強度と摩耗性を大幅に改善できます。
さらに、乾燥によるクラックの防止、表面の滑沢性の向上などが期待されます。
グラスアイオノマーの重合反応は酸塩基反応であり、初期硬化後24時間は重合反応が継続します。
その間の冠水もグラスアイオノマーの強度を低下させる要因となります。
コーティングによって冠水を防ぐことによって重合反応への悪影響を減らすことが可能です。


32も同様に不良充塡物の除去を行い、軟化象牙質を可及的に除去しました。


グラスアイオノマーの特徴としてフッ素徐放性を第一に取り上げる先生が多いのですが、
最たる利点は「歯質接着性」です。
材料そのものが化学的に歯質と結合しています。

CR充填の欠点が臨床操作において接着操作が必要になることです。
そして接着操作の不備はその予後に直結します。CAD/CAM冠の脱離と同じです。
CR充填では嵌合力でなんとか窩洞内に維持されるので、脱離などのはっきりした所見が出にくいのですが
ラバーダムなどで適切に防湿処置を行わないと接着してくれません。
CRは一見簡便なようでも、接着操作は非常に繊細です。

その点、グラスアイオノマーは被着面の環境が多少悪くても接着します。
酸塩基反応という水分を必要とする反応
アクリル酸のカルボキシル基が歯質カルシウムと分子的に結合
この性質が口腔内というウェットな環境との相性がいいのではないでしょうか。

よく「CR vs グラスアイオノマー」のようにどっちが勝っているか、と短絡的に考えてしまいがちですが
そもそも性質が全く異なるため、勝負という考えそのものが適切ではありません。
クルマで例えると「ランドクルーザーとフェラーリのどちらが優れているか」と言っているようなものです。
フェラーリは林道や沼地では使い物になりませんし、

ランドクルーザーはサーキットで走らせるレーシングカーとはいいがたいです。

歯質接着性という特性で見た場合、私は適切に防湿を行うことができない場合や、

被着面の性状が接着に不利な場合に有効であると考えております。
具体的には
・歯頸部・根面の修復処置
・訪問介護現場・へき地診療などの臨床操作が難しい環境
・乳歯の充填処置
などが考えられます。


3カ月経過後の写真です。問題なく経過しています。充填直後と比較すると、透明性が向上しております。
グラスアイオノマー修復は日本において政策故マイノリティですが、世界中で評価されており

特にヨーロッパ諸国ではCRとグラスアイオノマーの使用率はほぼ同じです。
日本のように「回す診療」では硬化時間が煩わしく、加えて保険点数が低いとなると

使用頻度が下がるのは仕方ないと思います。
グラスアイオノマーは非常に素晴らしい性質をたくさん持っており、もっと評価されるべきではないでしょうか。

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