ICONを用いたカリエス・インフィルトレーション法

小窩裂溝および隣接面はう蝕好発部位です。

 

小窩裂溝には従来よりシーラントを適応することで齲蝕発生を予防することが可能です。

 

しかし、隣接面のシーラントは不可能でした。

 

 

そのような中、コペンハーゲン大学のKim Ekstrand先生のご講演の際に

 

「インフィルトレーション法」という隣接面の初期齲蝕に適応できる画期的なシステムの存在を知りました。

 

インフィルトレーション法とは隣接面の初期齲蝕に対して無切削でレジンを浸潤させ、

 

進行を停止させるシールドレストレーションのひとつです。

 

 

当時は手技が非常に難しい上に、十分なエビデンスが存在しなかったため臨床応用は不可能でしたが

 

近年、ドイツのDMG社より「ICON」という製品が発売されました。

 

ICONは難しいインフィルトレーション法をより確実なものにできるよう工夫がされており

 

隣接面う蝕処置処置に新たな1ページを加えたと言っても過言ではないでしょう。

 

 

 


 16近心部にコンタクトカリエスを認めました。

 

象牙質に到達する齲窩があるため、充塡処置の提案をしたところ

 

本人より「絶対に削りたくない。進行を遅くするだけでもいいのでなんとかしてください。」との強い要望がありました。

 

適応外処置になるのですが、インフィルトレーション法で象牙質う蝕の進行を抑制したという報告があるため、

 

本人に十分なリスクの説明を行い、定期的なレントゲン診査で

 

進行が認められた時点で切削介入に入ることを承知いただいた上で応用しました。

 

 


ICONではエッチングに塩酸を使用します。絶対にラバーダムを装着してください。


処置歯以外の組織・歯牙に塩酸が付着すると致命的なダメージを与えかねません。

 

付属の歯間離開用ウェッジでは離開量が十分でなく、アプリケータの挿入が困難であるため、セパレータを使用しました。

 

 


患部を無水アルコールで確実に脱水し、専用のアプリケータを使用してレジンを浸潤させます。

 

無水アルコールは口腔粘膜に対して禁忌です。

 

また完全な脱水が必須ですので、やはりラバーダムが必要不可欠です。

 

 


確実に光照射を行います。照射器は必要十分なパワーと波長を持つものを用いるべきです。


インフィルトレーション法ではレジンに直接照射できないため、

 

未重合が起こらないよう多方向からしっかり照射してください。

 

 


約半年後の写真です。現時点でう蝕の進行は認められません。


エックス線造影性があると、なお素晴らしい製品となるでしょう。

 

今まではフロスが引っかかって切れていたとのことですが、

 

インフィルトレーション後はフロスがスルスル通せるとのことです。

 

ICONのような、より低侵襲なおかつ最小限の介入でむし歯を処置するような製品の登場を

 

今後も大いに期待しております。


実のところう蝕は削らなくても進行を止めることが可能です。

 

1980年代にシールドレストレーション法が考案され、

 

カリオロジーの発展とともにう蝕処置そのものの根底が変わろうとしております。

 

 

Mertz-Fairhurstらの報告によると85本のう蝕歯に軟化象牙質をまったく除去しないで

 

CRとシーラントで完全な封鎖を行ったところ、

 

10年後に予後不良歯はたったの1本だけで

 

残りの歯に関しては進行が停止し、デンティンブリッジの形成が認められたとのことです。
(Leaving carious tissues behind in a dentine cavity. the worst case scenario. Mertz-Fairhurst et al, 1998)

 


歯の部分的ないしは完全な欠損に対して「補う」ことだけが歯科治療ではないと考えています。

 

審美的・力学的な回復を除く、本質的なう蝕処置は現時点で進行遅延以外の方法がありません。

 

いかに削らない・抜かないで患者さんの生活の質の向上をはかるかが、今後問われてくるのではないでしょうか。