中程度歯周炎への非外科的アプローチ

私の歯周治療はオーソドックスであると自負しております。

 

教科書通りに淡々と進めます。

 

炎症および感染のコントロールが必要であるため、充填などのカリエス処置と違い時間がかかります。

 

「急がば回れ」という言葉通り、基本から外れない処置が良好な結果を導くと信じております。

 

今回のケースは口の中から出血が止まらないことを主訴に来院されたケースを紹介します。

 

本来は全顎デンタル14枚法+口腔内写真9枚法で記録を取っているのですが

 

個人情報の都合上、一部の写真を用いて紹介します。

 

 

 


多量の歯石沈着を認め、ほぼすべての歯から出血を認めました。


全顎的にポケットが深く、6mmを超える部位も認められました。

 

重度の歯肉炎であり、この状態で正確な歯周ポケットの診査は不可能です。

 

まずは炎症の改善による「仮性ポケットの消失」を目標に、口腔衛生指導+縁上スケーリングを行いました。

 

なお、動揺度はすべての歯牙において0であったため割愛しております。

 

歯肉縁上のコントロール後、歯周組織に大きな変化がありました。


しかし、臼歯部を中心に3mmを超える歯周ポケットと炎症を認めたため、歯肉縁下のコントロールに移りました。

 

いわゆるSRPですが、MIの観点・諸論文からの考察よりセメント質をできる限り残す、

 

デブライドメントに近い方法で歯肉縁下のコントロールを行っております。

 

以下歯肉縁下のコントロールをSRPとして扱います。

 


SRP終了後1週間の状態です。


炎症の改善が認められ、真性ポケットが48を除くすべてのポケットが6mm以下であるため

 

以降の歯周処置を非外科的にアプローチすることにしました。

 

口腔衛生指導を主軸に、感染のコントロールで歯周組織の改善を図りました。

 

 


治療開始後7カ月の状態です。

 

全顎的な炎症の消失が認められ、歯周ポケットの改善も認められます。

 

ほとんどの歯牙において3mm以内を達成したため、SPTへ移行し現在経過観察中です。

 

 

歯周治療で最も重要なことは「口腔衛生指導」だと考えています。

 

う蝕処置と歯周処置はどちらも口腔内常在菌感染症のコントロールです。

 

決定的に違う点が、う蝕処置は封鎖による隔離が可能ですが、歯周処置は封鎖による隔離ができません。
(イェテボリ大学のグンナー・ダレン先生の講演会より筆者訳・改編引用)

 

よって口腔衛生指導が「治療行為」として必要です。

 


「歯周病の原因は歯石である」と多くの人が勘違いしていますが、

 

スケーリングやSRPは所詮「清掃性の改善」にすぎません。

 

プラークが停滞しにくい環境の構築であり、厳密な意味での治療ではありません。

 


Sbordoneらによると、口腔衛生指導をまったく行わないでSRPを施術した場合、

 

約2ヶ月で元の状態に戻ってしまうという研究結果が出ています。

 

つまり私たち歯科医ができることは限られていると言えます。

 


歯周治療を成功に導くためには、患者さんの助けが必要不可欠です。

 

患者さんから何カ月もお時間を頂き、生活習慣を変えていただくなど、大変な努力を頂いたおかげで

 

今回のケースは緩解に向かったのだと確信しております。

 

感謝していただき、すごくうれしいのですが

 

本当に感謝すべきは私たち歯医者です。