近年において支台築造は大きく進化しており、様々なケースで直接支台築造を選択できる時代となりました。
そのなかでもファイバーポストはメタルコアと比較して弾性係数が象牙質と近似し、応力分布の偏りが少なく
歯根破折の防止につながると考えております。
今回は直接法によるファイバーポストの植立を紹介します。


13のクラウンのコアごとダツリで来院されました。
脱離してから1週間以上経過しているとのことで、根尖性歯周炎の予防を目的とした根管処置を行いました。


フェルールは全周1mm以上確保できていたのですが
ラバーダムクランプがかからなかったためCRにて隔壁を形成しました。
今回のケースではクランプの適合が甘く、ラバーダム防湿に不安があったため、
オラシールを用いて確実に防湿を行いました。

ファイバーポストドリルにてポスト窩の形成を行っている写真です。
歯根長の半分くらいを目安に形成を行っております。
根管処置では感染の観点よりラバーダムは必須ですが、支台築造においてもラバーダム防湿は重要です。
私は根管充塡でガッタパーチャを使用しております。
ガッタパーチャは100%封鎖でき、感染を完全にシャットアウトできる材料ではありません。
多くの清書や論文が示す通り、ガッタパーチャを口腔内と交通させたままにすると
ガッタパーチャ自体が細菌に汚染されてしまいます。
24時間後には根尖付近に細菌の侵入を許してしまうというデータもあるほど、封鎖性に乏しい材料です。
そんなガッタパーチャを汚染させうる要因の一つが支台築造時に潜んでいるのです。
ポスト窩形成後に安易に
「どうぞ、お口をゆすいでください」
なんてことをしてしまうと、せっかくの根管処置が台無しになりかねません。
確実な感染対策が必要です。

20%クエン酸による清掃+マイルドエッチングを行い
隔壁に用いたCRとの接着を確保するため、セラミックプライマーを塗布します。
その後、デュアルキュア型のボンディングを塗布します。
ステップを端折らないことが大切です。

支台築造時の写真です。
適切な長さにカットしたファイバーポストとコア用CRを用いて、ややオーバー気味に築造しています。
コア材はジルコニアフィラーの切削感に好感を持っている、エステコア(トクヤマ)を使用しております。
CRはジーシー様とトクヤマ様が突出して良い製品を提供していると思います。
やっぱりCRは国産ですね!


築造後、余剰CRの除去と形態修正を行いました。
ファイバーポスト断面を口腔内に露出させることに賛否両論あります。
ファイバーポストは多くのグラスファイバーの集合体であり、その間隙から感染が進む可能性を指摘している研究者がいます。
私はTEKや切断面にCRを添加するなどの対応をしております。
しかし、ファイバーポストが原因で感染することは確定しているわけではありません。
デイビッド・ロッジの言葉を引用すると
「そこから得られるものが小さいほど、学者の派閥争いは激しさを増す」

直接支台築造の1番の利点は切削歯質を最小限にできることです。
健全歯質はできる限り多く残っていることが望ましいと考えております。
たとえ残根に近い状態でも、安易に抜歯→インプラントにせず
「最善を尽くし真摯に治療を行う姿勢」は大切だと思います。
私たち歯科医師は「歯を助けることが使命」ではないでしょうか。