コンポジットレジン充塡において接着操作は必須です。
CRは基本的に歯質と化学的に接着しないため、エッチングやボンディングなどの歯面処理が必要になります。
以前に象牙質接着について解説しましたので、今回はエナメル質への接着操作を主に解説していきます。

「口の中から金属を無くしたい」という訴えのもと、インレー除去からのコンポジットレジン修復を提案しました。

ラバーダム装着後、インレー除去を行いました。幸いにも軟化象牙質を認めず、充塡操作に入りました。
私は窩洞全体にリン酸エッチング処理を施すことはしません。
象牙質の石灰化度は低く、安易なエッチング操作によって無機質の過剰な溶失を招きます。
象牙質の過剰な溶解によってコラーゲン線維などの有機質が露出してしまうと、接着に著しく不利に働きます。
過去にはコラーゲン線維を生かしたウェットボンディング法がありましたが、
プロットドライなど手順が煩雑かつテクニカルセンシティブであり、臨床的ではありません。
よって私は近年主流のリン酸基を有する1ステップボンディングにて象牙質の処理をおこなっております。
接着強度が高く、なおかつエッチングした部分とボンディング相が同一になる特異な性質があります。
テクニカルエラーが非常に少ないうえに、術後不快症状も非常に少ないです。
私はジーシープレミオボンドを使用しております。

エナメル質への接着は象牙質とは大きく異なります。
エナメル質は98%以上が無機質で構成され、有機質が極めて少ないのが特徴です。
コラーゲン繊維もほぼ含まれず、接着には非常に有利といえます。
しかし、1ステップ法の欠点がエナメル質との接着強度に劣る点です。
1ステップボンディングでは基本的にリン酸エッチングを行いません。
1ステップボンディングに含有されるリン酸エステルモノマーのエナメル質に対する脱灰力は十分ではありません。
特に削っていないエナメル質である「ノンカットエナメル」への接着が非常に不利です。
ノンカットエナメルはペリクルなどの有機被膜を含んだ滑沢面を有している上に、
唾液とのイオン交換などで耐酸性を有した表面性状になっています。
このバリアのおかげで耐う蝕性を獲得しているわけですが、この利点がかえって接着に悪影響を及ぼします。
そこでノンカットエナメルに対してリン酸エッチングを施します。
これを「セレクティブエッチング」といいます。
1ステップボンディングの欠点であるエナメル質への接着を、リン酸エッチングで補うことができます。
リン酸エッチングによってボンディングのぬれ性の向上、凹凸形成による機械的維持力の向上が見込まれ、強力な接着力を発揮できます。
私はジーシーエッチャントを使用しております。
適度な粘性によってエッチング液が窩洞に流れることなく留まってくれるため重宝しております。

患者さんから直接見えるところではないのですが、だからこそ気合を入れております。
特に見えない分、舌での感覚がより先鋭になる傾向があります。
そのため器具操作が難しい部位ですが、より念入りに研磨を行う必要があります。
最近ではマイジンガーHRツイストを愛用しております。
ディスク先端に柔軟性があるため、形状からは想像できないほど細部まで研磨できます。
鏡面仕上げまでのステップを大幅に短縮できるのでお勧めです。