CR充填で1本の歯を作った症例

もし事故で前歯を失ったら・・・。しかも隣在歯が健全歯だったら、先生ならどうされますか?
インプラントを入れたいですか?誰に入れてもらいたいですか…?
私なら抜歯したその日に完了する「ワンユニット・ブリッジ」を選択します。
隣在歯を一切削らず

仮歯の期間がなく

即日で審美的愁訴を満たし

修正が可能で他の補綴へ変更できる

他に類をみない治療方法です。
臨機応変とは「ワンユニット・ブリッジ」にとってぴったりな言葉だと思います。

 


歯が大きく揺れていることを主訴に来院されました。
事故で一度完全脱臼したことがあるとのことです。
診査の結果、動揺度Ⅲ度・歯周ポケット全周10mm以上、デンタルレントゲン上で歯根吸収像を確認しました。
歯根外部吸収・根尖性歯周炎の診断のもと、抜歯処置の適応と判断しました。
抜歯の診査・診断は厳格に行う必要があります。一度抜歯したら二度と元に戻りません
インプラントの台頭によって「(経営)戦略的抜歯」といった考え方があるようですが、私は厳格に否定します。

 


抜歯、止血確認後、前歯部の多数歯露出でラバーダムを装着しました。
ラバーダムの目的は術野の隔壁・防湿だけでなく、抜歯窩にボンディングなどの薬液が混入することを防止するためです。

また、被着面への血液の付着を防止することも可能です。
ラバーダム多数歯露出は器具の操作性を考慮して選択しました。
22近心にう蝕を認めたため、軟化象牙質の除去も同時におこなっております。

 


充填後の写真です。
充填自体は特殊なガイドを使用するため、それほど時間がかかりません。
抜歯窩への切削片の迷入を防止するため未研磨で終了しました。
実はCRの研磨は24時間後が教科書的に正解です。


翌日に抜歯窩の経過観察を兼ねてワンユニット・ブリッジの研磨を行いました。
スマイルラインにて審美的に問題ないため、このまま経過観察としました。

ちなみに本ケースをインプラントで補綴しようとすると非常にテクニカルです。
唇側の歯槽骨壁が完全に欠損しており、HAインプラントで抜歯即時埋入を行おうとすると唇側バルコニーの形成が大変です。
加えて残存骨量が少なく、フィクスチャーを大きく口蓋側に移動させなければなりません。
つまり最終補綴の形態がいびつになる可能性があります。
もし唇側を骨移植で対応しようとすると、吸収してしまう危険性があるだけでなく、最悪フィクスチャーの唇側露出という悪夢を見ることになります。
では抜歯後にチタンメッシュなどを併用した骨造成を行った後に、フィクスチャー埋入すればいいと考えることができます。
しかしプロビジョナルが入るまでどうするのでしょうか?
長期間の貼り付けTEK・・・つまり「ワンユニット・ブリッジ」と変わらないことになってしまいます!


約3か月後の経過です。経過は良好ですが、抜歯窩が落ち着いたためワンユニット・ブリッジ下部の抜歯窩のすき間が気になります。
患者さん本人も空気が抜けると訴えているため、修正に移りました。
この修正できることがコンポジットレジン修復の最大のメリットだと考えています。

 


修正後の写真です。
審美的にも機能的にも良好になりました。
充填操作が難しいのですが、接着操作をしっかり行うことで良好に接着します。
完全に重合したコンポジットへの接着にはセラミックプライマーが必須なので注意してください。


4カ月経過の写真です。
患者さんには大変満足していただいております。
「地元の友人に歯を自慢した」とお話していただき光栄です。

コンポジットレジンは応用範囲が広いだけでなく、非常にフレキシブルに対応できる強みがあります。
仮に今回のワンユニット・ブリッジが破損してしまったら、容易に修理できるだけでなく
ブリッジなどの他の補綴に変更ができます。
年齢や咬合状態に応じた微調整も容易です。

色調の変更も余裕で可能です。

全てやり直すことだってできます。
ファイナルレストレーションを提唱するアメリカンドクターが聞いたら絶叫することでしょう。

 

しかし、私は最初で最後の治療は存在しないと考えています。
人間は生きている限り変化します。
環境の変化、生活の変化、体調の変化、もちろん年齢も変化し老います。
変化していなさそうな骨も数年ですべてのカルシウムイオンが置換されます。
そういった変化を受け入れ、柔軟に対応する寛容性…つまり優しさが大切なのでしょう。
と言っている私はもっと優しい先生にならないといけませんね。