CR充填時に麻酔を使用しないメリット

私が歯科医師になって最初に習ったのが麻酔でした。う蝕処置・外科処置・歯内療法など歯科治療は痛みと向き合う機会が特に多いと思います。「痛み無く麻酔できると患者さんに信頼される」

「無痛治療のためにしっかり麻酔をかける」

これらを今までは当然のように考え、麻酔を使わない日はありませんでした。
ところが最近はほとんど麻酔を使っていません。修復処置に限定すれば8割以上は無麻酔で治療しています。透過像が大きくても、歯髄に近接していても無麻酔で始めます。

 


金属の詰め物がとれたことを主訴に来院されました。冷痛が若干認める以外は自覚症状がありませんでした。

  


ラバーダム装着後、スプーンエキスカベータにて軟化象牙質を除去しました。軟化象牙質には知覚がないため、麻酔の必要がありません。

本ケースではう窩の開拡が不要であり、タービンを全く使用せず軟化象牙質のみを除去しました。
痛覚があるのは健全な象牙細管を認める象牙質です。つまり健全歯質を傷害しない限り麻酔を使用する必要がないわけです。
患者さんは「痛くない治療をしてほしい」のであって「麻酔をしてほしい」わけではありません。

麻酔には多くの危険要因が潜んでいます。
麻酔時に気分が悪くなってしまう患者さんや、全身疾患との兼ね合いが心配な方もいます。
アレルギー、アナフィラキシーショック、疼痛性ショック、神経麻痺・・・。

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全国の歯科医師会の医事対策にもち込まれる医療紛争でもっとも多いのは、注射後、処置後の麻痺だそうである。
そして、意外にも通常の歯科治療後に起こる、オトガイ神経麻庫が多いという。
臨床のアクシデント&ピットホールp18より引用
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麻酔を使用しないことは多くのメリットがあります。
麻酔によって起こりうるトラブルの防止になるうえ、全身疾患と麻酔の兼ね合いも問題ありません。
また、知覚があることで過剰切削を防ぐことができます。
歯髄に近接している場合には知覚を参考に暫間的間接覆髄法・ステップワイズエキスカベーションに変更することもできます。処置後の咬合調整においても知覚の存在は大きいと感じています。

  


充填後の写真です。歯肉の状態から麻酔を使用していないことが分かると思います。
2級窩洞のCR充填では、CRの重合収縮によってコンタクト圧が緩くなりやすく注意が必要です。
私はマトリックスの厚みと重合収縮を補正するために歯冠離開を行っています。
この歯冠離開時がもっとも痛みが生じやすいです。
またラバーダムクランプで歯肉を挟んでしまうと、けっこう痛いので注意してください。

  


約6か月経過時の写真です。問題なく経過しています。
麻酔を使用しないう蝕処置は突飛な発想に思われますが、少なくとも30年以上前から確立されています。
大学でもエナメル質や軟化象牙質に痛覚が無いことを講義しているはずです。
エキスカベーションは正直時間がかかります。タービンで健全歯質ごと切削してしまえば時間短縮になりますが、健全部位の障害は患者さんの利益になるのでしょうか。
麻酔を使用しないことで健全象牙質を傷害しにくく、術後疼痛や知覚過敏などが激減します。私は当医院においてCR修復後に術後疼痛・知覚過敏を訴えたケースは1度もありません。麻酔を使わなかったことによるクレームも皆無です。
初めての患者さんは「麻酔を使わないで本当に大丈夫ですか?」と心配される方がいますが、処置後には麻酔を使わないで治療できたことに多くの人が喜んでいただけます。もちろん麻酔を希望される方には麻酔を使用します。


何かを追加したり増やしたりすることで、かえってそれを管理するコストが発生します。
麻酔もそうですが、減らすことで得られるメリットは案外大きいのかもしれません。

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こちらのページは東松山グリーン歯科の渡部誠弘が個人運営する勉強会での向上と研鑽を目的とした歯科医師向けコンテンツです。
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