カリオロジーとグラスアイオノマー

グラスアイオノマーセメントの応用範囲は裏層くらいで最終修復物として使用できないと考えている先生が多いと思います。

しかし近年のグラスアイオノマーは性能が飛躍的に増しているため、最終修復物として十分機能します。

事実、ヨーロッパ諸国では修復材料として一般臨床でCRと並んで普及しています。

 


かなり前に金属が取れて放置していたとのことです。

 

  


タービンなどの回転切削器具を一切使用せず、エキスカベーションにて残留セメントおよび軟化象牙質を除去しました。

この方法はARTというJo E Frencken先生が提唱したWHO推奨の超低侵襲処置です。

もともとは水道、電気などのインフラが整備されていない発展途上国で歯科治療を行う方法として開発されました。

その治療成績があまりにも良好だったことより、先進国でも応用され始めました。

まさにリバースイノベーションたる治療方法です。

 


充填およびEQUIA Coat塗布直後の写真です。

ARTでは健全象牙質の障害を最小限に抑えることができますが、軟化象牙質の残留が懸念されます。

そこでグラスアイオノマーの化学的性質が生きてきます。
グラスアイオノマーは歯質と化学的に接着します。つまり歯質と一体化し完全に封鎖してしまいます。

窩洞を完全に封鎖することで内部に細菌が残留していたとしても活性化しません。

これは細菌が生育するための栄養供給と繁殖スペースをシャットアウトできるためです。

(そもそも窩洞内を滅菌できる治療方法は存在しません)
1980年代に登場したシールドレストレーションの考え方です。

シールドレストレーションとは軟化象牙質を取り除かなくても窩洞を完全に封鎖すればカリエスが進行しない、という考え方です。

今では倫理的に問題になりそうな実験です。
つまり軟化象牙質を取り残したとしても、封鎖が確立していればう蝕の進行を停止できます

軟化象牙質の残留を過度に気にして健全象牙質ごと大きく切削する先生もいますが、カリオロジーの観点からは望ましいとは言えません。

私も以前は健全象牙質ごとタービンで削り落としていましたが、術後知覚過敏・術後疼痛が多かったです。

ちなみに2000年代にシールドレストレーションの10年経過の論文が出ており、良好な成績を示しております。

 


約1年経過の状態です。良好に経過しています。EQUIA Forteは機械的性質に優れるため、2級窩洞に使用することができます。メーカー公式の説明書にも2級窩洞は適応症として記載があります。

グラスアイオノマーといえども侮るなかれ!
カリオロジーは次の時代へ躍進中で、あくまで実験段階ですが軟化象牙質すら除去せず温存できる可能性があるそうです。

歯医者で歯を削らなくなる日は、そう遠くないかもしれません。

 

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