ゴールドクラウンと根管治療

CAD/CAMシステムの発達によってロストワックスによる鋳造法が衰退しつつあります。貴金属の価格が高騰し、国策的にもメタルフリーの方向に転換し始めています。しかし金属は金属ならではの良さがあり、特に金合金に勝る適合性を持つ間接修復は現時点で存在しないと考えています。

 


左上の歯に強い痛みを感じることを主訴に来院されました。歯髄腔に近接した修復物が認められます。
自発痛(+)、打診痛(++)、冷温痛(-)、根尖部圧痛(-)で失活歯髄の疑いが強かったのですが、修復物が大きく冷温痛診査の信用性が低いと判断し、切削診査に移行しました。
抜髄は極力避けたいため、歯髄保存の可否を判断するため無麻酔で処置を進めました。
術前の写真が無く申し訳ありません。

 


ラバーダムクランプを装着した直後に修復物が脱離してしまい、加えてクランプを装着できるほど頬側歯質が残っていませんでした。

そのため、やむなくラバーダム無しで処置を進めました。
しかし歯髄腔に到達しても痛覚・出血などの生活反応はなく、歯冠部歯髄はすでに壊死していました。
そのため根管治療に移行することとなりました。

 


全根管の根尖付近の歯髄に痛覚が認められ、かろうじて全部性の歯髄失活を免れていました。
Dr.Ricucciによると感染が根尖にまで及んでいない場合、根尖病変を形成している症例に比較して予知性に優れるとのことです。
また同氏によると側枝や根尖孔外にガッタパーチャなどの根管充填剤を圧入することのコンセンサスは低く、正常組織が異物と接触する表面積を増大させることによる治癒遅延の危険性を指摘していました。
(Domenico Ricucci 2015)

そのため私はガッタパーチャを根尖孔外に押し出すことはせず、根尖孔から1mmアンダーで根管充填しています。
Dr. Ricucciの初来日の際に名古屋まで飛ぶように行ったのを思い出します。先輩の紹介で聴講することができ大変勉強になりました。


歯科医師になって最初の5年くらいは学会・セミナーや講演会など狂ったように参加していた時期がありました。
おかげで多くの人たちに出会い、支えられ、こうして微力ながら臨床に貢献できているのだと思います。
しかし、「医療」と付くとなぜこんなにも高額なのでしょうか・・・。給料のほとんどをつぎ込んでいました。

 


ファイバーコア築造後に形成をした写真です。歯冠長が短く維持に不安があった為、念のために保持孔を付与しました。
このように歯冠長が短く、維持力に不安が残るケースこそ鋳造冠の出番です。
精度が高くなっているとはいえ、CAD/CAMではミリングマシンでの削り出しに限界があります。特に保持孔はスキャナーで正確に読み込みにくく、加えて内側性の構造物になるため削り出しも難しくなります。
適合性に関しても鋳造冠に軍配が上がります。上手な技工士さんが製作すると唾液が介在しただけでも取れなくなります。

  


上顎最後臼歯なので審美的に差し支えありません。そのため適合性を優先してゴールドクラウンにて補綴しました。

無調整で装着できました(リムーバブルノブの除去はしています)。ステキですね!

  


約2か月後の写真です。良好に経過しています。手前の第一大臼歯の小窩裂溝部分はう蝕活動性が低いと判断し経過観察しています。

進行がほぼ停止しているう蝕病変への介入には大きなメリットはありません。
今回の処置歯は見えない部分であり効果を実感しにくいのですが、そういう所までこだわることが粋だと思います。
「魂は細部に宿る」と言います。歯科治療は細かい作業の積み重ねであり、ひとつひとつ丁寧に進めていくことで結果につながるのではないでしょうか。

ブログを書き続けて2年目が過ぎていました。お付き合いいただき大変感謝しております。

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こちらのページは東松山グリーン歯科の渡部誠弘が個人運営する勉強会での向上と研鑽を目的とした歯科医師向けコンテンツです。
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