ここ最近のコンポジットレジンの躍進は目覚ましく、各社が様々な進化型レジンを上市しています。グレースフィルシリーズはインジェクタブルレジンという、ペーストレジンの賦形性と堅実性、フロアブルの操作性を併せ持つイノベーティブな製品です。

全体的なむし歯治療を希望された患者さんです。審美性も気にされており、見える範囲は白くしてほしいとの希望がありました。


軟化象牙質の除去後の写真です。
石灰化度が高く、接着に有利な硬化象牙質(透明層)を含む着色した象牙質は保存しています。
「黒い=カリエス」ではなく、エキスカベーションとう蝕検知液で判断するべきだと考えています。
健全象牙質は接着に不利となる水分が多く含まれるだけでなく、MMP(マトリックス メタロ プロテアーゼ)という酵素の活性が高いためボンディング層の崩壊スピードが速まります。
そのため、軟化象牙質を健全歯質ごとタービンでえぐり取ることはお勧めできません。
27近心面はICDASコード1~2のエナメル質カリエスのため、経過観察としました。

充填後の写真です。グレースフィルのゼロフローは、ほとんど垂れずに形を保持できます。それなのに歯質と接触した部分がスーっと馴染むのでマージンでの未充填を防ぐことができます。
う蝕学の観点より、感染象牙質を取り残したから二次カリエスになるのではありません。
二次カリエスは必ず修復物・補綴物のマージンから発生します。
(そもそも窩洞内を完全に滅菌することは不可能です。)
ダイレクトボンディングで注意しなければならないことが、賦形に気を取られ過ぎてマージンにステップができてしまったり、象牙質が露出したままで終わらせてしまうトラブルがあります。術後疼痛や早期の二次カリエスの原因になり非常に危険です。
グレースフィルはマージンでの適合性を特別な操作なしで得ることができ、成功率を飛躍的に高めることが可能です。
また、付属のエレファントチップは手で曲げることができるため、従来のチップでは充填しにくかった窩洞も楽に充填することができます。
カメレオン効果が低いので色調選択がやや難しいのですが、発色と透過性のバランスが良く、レイヤリングで十分カバーできます。曲げ強度にも優れ、研磨性も良いので文句なしの優秀なCRです。
ちなみに、ダイレクトボンディングの研鑽には写真撮影が不可欠です。口腔内で見るのと写真で見るのは全く違います。
フレームに3歯程度入れるように撮影すると、肉眼ではほぼ観察できない微細な部分まで写ります。
コントラストも肉眼より強く出るので、術後の色調確認も容易です。
そして撮影した写真を高解像度で多くの先生に見てもらいましょう。
必ず上達します!