大臼歯のCAD/CAM冠とファイバーポスト直接法

CAD/CAM冠の適応が広がり、下顎第一大臼歯が保険適応となりました。今期の改定でレジンブリッジの請求が認められるなど、今後も国策主導でメタルフリーが進められるでしょう。今年2月の審美充填セミナーの最後にお話ししたように「金属・補綴から複合材料・保存処置」に加速度的に移行しつつあります。逆に言うと「従来の補綴主導型の処置」の淘汰が始まっています。先生方は、時代の変化をどう捉えていますか。


46の違和感を主訴に来院されました。デンタルおよび口腔内診査より、適切な根管治療が施されておらず、仮封処置が施されております。

  


軟化象牙質除去後、CRにて隔壁形成をしました。髄床底の一部までう蝕が進行していましたが、歯質は十分に残存しており、保存可能と判断しました。髄腔歯髄はすでに失活しておりましたが、根尖付近にはファイルにて知覚が触れ、一部生活歯髄でした。ちなみに完全に失活歯髄である場合より予後に優れます。
ニッケルチタンファイルであるMtwoにて根管形成しました。

  


根管処置後にファイバーポストによる支台築造を行いました。私は基本的に直接法で処置をしております。
その際に絶対に外せないのがラバーダムです。支台築造には根管を完全に封鎖する役割があります。
支台築造時に防湿が不完全であると、接着に重大な悪影響が生じ、辺縁漏洩の危険性が考えられます。
勘違いしやすいのですが、ラバーダムを装着する理由は「防湿」です。
唾液による術野の汚染を防げばいいのではありません。
口腔内の湿度はほぼ100%です。実際にデンタルミラーを入れると、湿気で曇るほど高湿度環境です。
ラバーダムを装着しないと、デンタルミラーが曇るのと同じように、ファイバーポストや築造用レジンなどの表面に水分が付着してしまいます。
付着した水分は接着阻害因子となり、治療成績に影響を及ぼします。
ラバーダムは1枚5円程度なので、絶大な費用対効果です。慣れてくれば1分以内に装着できます。

複雑な排唾管装置を推奨する先生もいますが、準備・装着・器具洗浄など、どれをとってもラバーダムのほうが簡便で確実です。

 

築造窩洞形成後、クエン酸による清掃を行いました。

  


インテグラ・ファイバーポストを使用しました。1本ずつ個包装のため衛生的です。またシランカップリング処理が施されているため、チェアサイドでの不安定な表面処理に依存せず、不確定因子の減少につながります。
隔壁で治療したCRと接着させるためにセラミックプライマーによるシランカップリング処理を行いました。

  


支台築造後の写真です。築造当日にテンポラリーを装着しなかったので、念のためにファイバーポスト部分をCRで被覆しています。

  


CAD/CAM冠による補綴で注意しなければならないことがクリアランスです。大臼歯は目視で確認しにくいため、クリアランスが浅くなりがちです。メタルと違いCAD/CAM冠でクリアランスが不足すると、早期の破損に直結するだけでなく、技工作業が困難になります。
クリアランスゲージを使用して、確実にクリアランスを確保するように心がけています。
印象はパナジルを使用しました。親水性が強く、歯肉縁下までシャープに印象採得できます。操作性も寸法安定性にも優れるシリコン印象剤で、私のお気に入りのひとつです。

   


浸出液の影響を最小限に抑えるため、セット時にも歯肉圧排しています。
使用したセメントはジーセムONEです。マルチプライマーを塗布し、さらに強固な接着を確立するために接着強化プライマーも塗布しました。接着と合着は全く違う別物です。
従来の金属補綴ではドクターの調整後に「じゃあ後はお願い」とアシスタントに任せることができましたが、接着はそうはいきません。金属補綴と同じワークフローでCAD/CAM冠をセットしてしまっていることが、CAD/CAM冠の早期脱離の一要因であるのかもしれません。

  


セット直後の写真です。ブロックはセラスマート300を使用しました。FMCと比較すると審美面において歴然の違いです。これからは「保険は銀歯、自費だと白」だけのコンサルでは通用しないですね。

  


4か月後の経過観察です。問題なく良好に経過しております。

 

パソコンやスマホなどのコンピュータによって、楽になるどころか、かえって忙しくさせられている感があります。

CAD/CAM冠によって貴金属使用の削減にはつながりそうですが、深刻な歯科技工士不足には、果たしてどうでしょうか。

 

1960年代に書かれた「人と企業は どこで間違えるのか?」より
(ゼロックスによるコピー機によって)今あるような形態の本が消える
と書いてあります。

 

2018年時点でまだ本はしっかり存在していますね。いつになったら図書館から本が消えるのでしょうか。
AIによって仕事が奪われる、人間が絶滅する・・・?
新しいテクノロジーによって、人はもっと忙しくさせられるのかもしれません。