ダイレクトブリッジによる抜歯即時補綴

材料の機械的性質の著しい向上によって、従来では考えられなかった治療が可能になっております。
今年度から保険適応になったファイバー強化レジンブリッジのエクスペリアや、大臼歯にも適応できる強度を兼ね備えたCAD/CAM冠など、歯科医学において技術革新が加速度的に進んでいる感があります。
ダイレクトブリッジもその技術進歩ゆえに可能になった治療です。従来ブリッジやインプラントと比較して圧倒的に低侵襲であり、その応用範囲は従来の治療を凌駕する可能性を秘めています。

 

 


下の歯が前に出ていることを気にされていた方です。ポケットは2~3mm程度ですが、動揺Ⅲ度で舌側は根尖付近まで退縮が進んでいます。矯正力をかけることも不可能であり、審美的側面より抜歯と診断しました。

 

ダイレクトブリッジ 術中

両臨在歯は健全歯であり、形成からブリッジを装着するのはMIの観点から最良とは言えません。

インプラントは著しい骨吸収がある点と、フィクスチャーの埋入ポジションが臨在歯に近接しすぎており、

臨在歯に不可逆的なダメージを与えかねません。

下顎前歯にナローを埋入する症例報告を見たことがあるのですが、はたして長期的に良好な予後となるのかは疑問が残ります。

 

抜歯・止血確認後ただちにダイレクトブリッジ処置に取り掛かりました。
抜歯後に即日でダイレクトブリッジを装着するうえで最も注意しなければならないのが術野の環境です。

出血しているためラバーダムなしでは不可能です。

しかしラバーダムを装着すると臨床操作が非常に難しくなります。

シリコンガイドなどを用いて単純化を図ると効率的に処置を進めることができます。

 

  

ダイレクトブリッジ 術直後

治療直後の写真です。抜歯窩に切削片を入れたくないので最小限の研磨で留め、ナノコートカラーのクリアを塗布しています。

 

ダイレクトブリッジは副次的な処置を大幅に削減してくれます。

従来ブリッジと比較して形成・TEK・印象採得が不要です。

 

義歯を装着する場合でも、抜歯窩の治癒を待つ必要がなく、印象採得から義歯の清掃などの管理も不要です。

 

インプラントと比較しても骨補填やフィクスチャー埋入、上部構造の製作まで数多くのステップが不要です。

 

抜歯→ダイレクトブリッジの装着 だけと非常にシンプルです。ゆえに即日処置が可能です。
そして変化する口腔内に柔軟に対応可能です。それこそ除去も容易です。

 

もちろんダイレクトブリッジにも欠点があります。
それは非常にテクニカルセンシティブであることです。特定の器具や材料を買えば出来るわけではありません。

スキルだけでなく、集中力も要します。診療と診療の合間の片手間でできる治療ではありません。

 

耐久性を疑問視する先生もいますが、接着界面が劣化したら再度接着することが可能で、表層の劣化には表面を一層切削し、充填しなおせば良好な経過をたどります。力学的に問題が出たら、従来の補綴に変更すればよいのです。

義歯は修理しやすいですが、ブリッジでは再補綴を検討しなければならず、コストも時間も要します。

インプラントでトラブルが出たら・・・考えたくないですね。

 

つまりダイレクトブリッジは技術をしっかり習得すれば、非常に有意義な治療方法となりえるのです。

  

  

ダイレクトブリッジ 治療後

1か月後の経過観察で特に問題はありません。抜歯窩の治癒を確認して、研磨しています。ブリッジが入っていることが誰にも知られてないと喜んでいただけています。

 

  

ダイレクトブリッジ 経過観察

約1年後の経過観察においても大きな問題は見受けられません。

この1年の間にも抜歯窩の治癒に合わせて何度か形態修正を行っております。

ダイレクトブリッジだからこそ可能な柔軟性です。

 

最も強いものが生き残るのではなく、最も賢いものが生き延びるでもない。唯一生き残るのは、変化できるものである。
チャールズ・ダーウィン

 

金属補綴をはじめ「従来のやり方」に固執するのではなく、大きな変化に柔軟に対応することは、未来へつながると確信しています。

エクスペリアをはじめとする複合材料の保険への収載という目に見えるわかりやすい変化がある今こそ、進化する最終時点かもしれません。

 

* 注意事項 *

こちらのページは東松山グリーン歯科の渡部誠弘が個人運営する勉強会での向上と研鑽を目的とした歯科医師向けコンテンツです。
症例写真は患者様の了解を得たうえで掲載しております。
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