CR複雑窩洞の接着操作

 ICDASが大学教育で採用され、国家試験にも出題されるようになり、ようやく普及し始める兆しがあります。

当医院では5年前からICDASによるう蝕管理システムを構築しておりますが、一般化するまでにはさらに長い年月がかかるでしょう。気になる点が「Dental Caries The Disease and its Clinical Management」3rdでICDASの項目が見当たらないこと。(私が見逃しているのでしょうか)・・・気になります。

 日本でICDASが一般的になるころには、別の指標が推奨されているのかもしれません。

 


 CRが普及することは素晴らしいことです。ですが失敗も目にすることが多くなりました。CRはアマルガムと違い削って詰めればいいわけではありません。

 


 不良充填物および軟化象牙質を除去した写真です。遠心はコンタクトポイントを保存した窩洞形態を採用しました。

かなり複雑な窩洞形成によって、コンタクトポイントと辺縁隆線を保存しました。歯科医師でも勘違いするのですが、着色部分は軟化象牙質ではなく着色象牙質であって、う蝕治療ガイドラインで除去が推奨されていない部分です。

 


咬合面観です。トンネリング窩洞によって辺縁隆線の保存を図りました。このような非常に複雑な窩洞は軟化象牙質を残す危険が高く、高度なテクニックが必要になるため、強く推奨できません。

 危険な場合は無理せず、辺縁隆線を落として、窩洞を単純化させてください。感染歯質の除去だけでなく充填操作も楽になります。

 


 削っていないエナメル質のみを37%リン酸にてエッチング処理しています。象牙質に37%リン酸を使用すると過脱灰され、象牙質内の有機物が露出してしまい、接着に不利に働くので注意が必要です。

 


 1ステップボンドのGプレミオボンドを使用して、ボンディング操作を行いました。最近のボンディングにはセルフエッチング機能がある製品が多いです。要するにボンディング自体が歯質をマイルドにエッチングしてくれます。「エッチングされた部位=ボンディングの浸透部位」となるため、理にかなった歯面処理と言えます。

 

 一方でボンディング液に水を添加しなければならない欠点があります。水がないとイオン化しないので、酸を作ることができません。この水が厄介で、不必要に残っていると接着疎外の原因となりえるのです。

 

 それだけでなく、接着モノマーと水とは相性が悪いので、両者を溶かせる溶媒も添加しなければなりません。

溶媒としてエタノールやアセトンなどが使用されています。

エタノールは揮発しにくいので、操作時間の余裕があります。しかし揮発しにくいということは飛ばしたいときに、なかなか揮発してくれません。なので、強圧で長い時間エアブローしなければなりません。

アセトンは揮発しやすいので、操作時間がシビアです。ですが揮発しやすいため、比較的簡単に飛ばせます。臭いがきついのですが、溶媒の残留の心配が少なく安心です。

 ボンディングは高価なので、蓋の中に溜まった液まで使う先生もいるようですが、溶媒が揮発している可能性があるため本来の機能を果たさない危険があります。ダッペンディッシュに滴下した液を「使いまわす」ことなど言語道断です。

 


 グレースフィルにて充填しました。形態維持性が高く垂れにくいです。さらに窩洞なじみも良く、充填不良になる心配を払しょくしてくれます。チップの微妙な角度調整ができるため、本症例のように複雑な窩洞形成への充填に最適です。

 


 充填・研磨後の写真です。ちなみに無麻酔です。健全象牙質を可能な限り保存しているため、しみる程度で治療できる場合があります。ただし痛覚は個人差が大きいため、麻酔を使用することも多いです。

 


約1か月後の経過観察です。問題なく機能しており、歯質を保存できたことに本人も喜んでおられました。

 

 

89歳で現役の精神科医!という中村恒子先生が著書でこんなことを書いていました。

 

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昔から「大志を抱け」とよく言われるけど、あまり立派な志や高すぎる目標ばかり持ちすぎると、未来のことや成果にばかり気がとらわれてしまいます。

すると、目の前のことに打ち込めなかったり、迷いが生じてしまうんやないでしょうか。

~中略~

必要以上に気を張らないで、「ちょっと目の前の人のお役に立てればいいかなあ」ぐらいの気持ちで仕事をしてみるのはどうでしょう。

 

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「心に折り合いをつけてうまいことやる習慣」中村恒子著 すばる舎

 

 

 私より若い先生は非常に優秀な方が多いです。学力・語彙力が高く、礼儀正しく紳士的で、向上心があり頭の回転が速い。それ故、目標が恐ろしく高くなっています。たしかに大志は大切ですが、その目標に潰されてほしくありません。周囲の期待や自分へのプレッシャーで人生を不意にしないでほしいです。

 長い目で見て、それこそ中村先生のように89歳で元気に診療できる、くらいの余力をもって臨床に挑んでほしいです。

 

* 注意事項 *

 

こちらのページは東松山グリーン歯科の渡部誠弘が個人運営する勉強会での向上と研鑽を目的とした歯科医師向けコンテンツです。

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